彼は『溺愛』という鎖に繋いだ彼女を公私ともに囲い込む【episode.2】
「コーヒーはいいですので、ぜひ京子さんも座ってください……菜摘も座れ」
京子さんは専務の横に座り、私は彼の隣に座った。
「ひと月後に戻れということで父さんから連絡がありました。ミツハシと相談してくれたそうですね。兄さんありがとう」
「ああ、それは父さん、いや社長が主導してミツハシの社長に相談した。まあ、父さんに礼を言っておけよ。会長がいない時間を見計らって行ったんだ。あとから達也君が入ってきたがすでに決まったあとだった」
すごい……それってある意味作戦勝ち?もしかして、ミツハシは氷室商事にはかなわないということなのかもしれない。
「達也がミツハシで社長になるころには、兄さんはすでにうちの社長になっているだろう。少し世界が変わるかもしれないな」
「まあ、そうだろうな。でもうちに足を向けることはできない。うちあってのミツハシだ。うちはミツハシがいなくても平気だがね」
にやりと笑う専務。複雑な心境の私。ミツハシを下に見られるのは正直いい気分ではない。