彼は『溺愛』という鎖に繋いだ彼女を公私ともに囲い込む【episode.2】
「森川さん。顔に書いてあるよ。ミツハシを悪く言わないでって……」
専務が私を見て笑っている。
「あの……すみません」
「痛いな、つねるなよ京子」
「ごめんなさいね、菜摘さん。この人本当にデリカシーがなくて……ミツハシはいい会社だし、気にしないでね」
「……いいえ。すみません」
ポンと私の頭に手をやる彼は、優しい目で私を見ながら言った。
「いい会社だが、今の社長にそれ以上は望めない。達也がいなければ氷室で吸収合併してもよかった。俺がミツハシを離れることで、これからは達也の求心力が一層強まる。あいつのことだ、おそらくうち以外の商社と新たな提携も視野に入れているだろう」