彼は『溺愛』という鎖に繋いだ彼女を公私ともに囲い込む【episode.2】
「まあ、そうだろうな。でもお前をうちに戻すということは、あいつもどうなるかぐらいわかっているはず。お前はあちらのいいところも、悪いところも、有能な社員もすべて把握済みだろう。数年はうちの顔色を窺わないと経営できないことくらい百も承知のはずだ。その後に関しては……俺とお前で出し抜くことも可能だろう」
ふたりは同じような微笑みを浮かべて笑っている。怖い兄弟……。これってどう考えたらいいんだろう、複雑な心境だわ。
「兄さん、今回菜摘を企画室に入れたのは誰の案?」
「まあ、お前の想像通りだろうな」
「やはりそうでしたか。まあ、彼女にはいい勉強になったでしょう。あそこは彼女にピッタリですからね。狼の巣にひよこを落としてくださったのが唯一気に入りませんでしたが……」