彼は『溺愛』という鎖に繋いだ彼女を公私ともに囲い込む【episode.2】

「はい。今日戻るかもしれないと京子さんから聞いていました。それで準備していました」

 彼はふうっと息を吐き、急に私を抱きしめた。頭を肩に乗せてぎゅっと抱いた。彼の香水が香る。

「最近の菜摘はこれだからな……参るよ。怒れないじゃないか。どうすると俺が喜ぶか知り尽くしている。今回は俺にお仕置きされるのを覚悟していてやったんだな。陥落したくないのに、くそっ」

 私は彼の背中をそっと抱きしめた。

「私は陥落しちゃった。研修に行っていることすべてわかっていて、なおかつ知らぬふりを通して私がやりやすいようにしてくれた。俊樹さんの手の上で踊っていただけだったのに、嫌な気持ちひとつしなかった。惚れ直しました」

 彼は私をじっと見つめるとキスをした。優しいキス。

 もっと欲しかったのに、すぐに離した。彼の服をぎゅっとつかんでつま先立ちになった。
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