彼は『溺愛』という鎖に繋いだ彼女を公私ともに囲い込む【episode.2】

 いつもの靴音がして、ぴたりと止まるとそこにはいつもの彼が顔を覗かせた。

「ああ、菱沼さん。先週はお疲れ様でした」

 菱沼さんがその場で立ち上がり綺麗な礼をした。そういうところも尊敬する。きちんとされている。

「お疲れさまでした。不慣れでご迷惑おかけいたしました」

「おい、嫌みかそれ?」

 顔を上げた菱沼さんが笑っている。

「とんでもない。心からの言葉ですよ。あなたのことを森川さんに褒めていたというのに。ね、森川さん」
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