彼は『溺愛』という鎖に繋いだ彼女を公私ともに囲い込む【episode.2】
「はいそうですよ。とても褒めてくださっていました。ついでに私まで褒めてくださいました。菱沼さんに褒められるなんて京子さんに今度自慢します」
あきれ顔の彼は私を見て言った。
「森川さん。僕はね、今日死ぬほど忙しいんです。君には死ぬほど働いてもらいたいんだけど、こんなところで褒められて鼻の下伸ばして、僕を放りっぱなしというのはどういう了見なんだろうね」
私はすぐに立ち上がり、菱沼さんに頭を下げた。
「菱沼さん、申し訳ございません。お礼にお酒を少し見繕ってきたんです。お机の下へ袋に入れておいてありますので、お持ち帰りください」
「そんな気遣いいらないのに……。せっかくだからありがたくいただくよ。そういうところも立派な秘書になったね」