彼は『溺愛』という鎖に繋いだ彼女を公私ともに囲い込む【episode.2】

 はっきり言えば、言うことを聞かずに自分のやり方で仕事をこなしていたところもある。

 だって悪いけど、当時ここの業務内容を俊樹さんより私のほうが知っていたから。彼に方法を自分から提案したこともある。まあ、今思えば生意気だった。

 でも、彼に言われたことを真に受ける子は考えこんじゃうのかもしれない。そうか、秘書の子が逃げ出すような人だったから、私みたいな秘書畑じゃない骨のある女を抜擢したのね。

「菱沼君、調子に乗って余計なことを言わないでほしいんだが……。君はさっさと会長のところへ行ってください。さぞかし君がいなくて困っていたことだろう」

 しっしと手で払うようにして菱沼さんを追い出す。彼は笑いながら、出て行った。
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