彼は『溺愛』という鎖に繋いだ彼女を公私ともに囲い込む【episode.2】
「いや、いい。忙しいから挨拶だけだ」
「嫌みを言いにきたんでしょ」
「いや。世話になったな。面倒な茶番に付き合わせて、君も忙しいのに悪かった。菱沼さんをもらえたのは正直ありがたかった。彼のおかげでいつもより三日も早く帰れた。他の奴だったら絶対無理だったろう」
「大したものですね。森川さんの意図は少し空回りしました。でも、彼女にとっても、俊樹さんにとっても、うちの会社にとっても利益があったようなのでいいとしましょう。会長だけが不便だったようですけれどね」
「そうだろうな。あれほどの人に何年も任せっきりだといないときに本当に困るだろうな。自分では何もできなくなるだろう」