無敵の君と弱気な僕。
「こっち向いてよ」

ファインダー越しに僕を見ながら君は言った

人が苦手で
目を合わせるのが苦手で
友達なんていない僕

無になりたくて
空気になりたくて
じっとはしっこでみんなの邪魔にならないように

そんな僕を君は

「透きとおった、キレイな存在だね」

と 言った

そんなキレイなもんじゃない
地球上に存在しなくても
何も変わらない毎日だよ、と言うと

「私にとっては変わるよ?ってことは、私が変わってしまった=私の友達も私を見て変わるよ?それがどんどん連鎖していく…だからみんなにとって何かが変わってしまう存在なんだよ」

だからとても大切な、特別な存在なんだよ?と笑いながら君は言った




難しいことは嫌いだ
楽に生きていきたい
ただ人と関わりたくなかっただけなのに

君は僕の目の前で
カメラを構えている
そんな君を
見つめ返す勇気もなく
ただぼんやりと遠くの空を眺めていた

「こっち向いてってば」

右手をひらひらさせながら君は言った

「なんでだよ」

頬が赤くなる
恥ずかしくて
何がそんなに恥ずかしいのかもわからなくて
手のひらが汗ばむ

「君との思い出をね、残したいんだよ」

ほかのみんなと残せばいいのに
君は人気者なのに
声をかけたらすぐみんなが集まる存在なのに
僕との思い出を残したいと、まっすぐな瞳で僕に言うんだ

君の強い心の一部を僕に分けてほしいよ
まっすぐな言葉に
まっすぐ応えられるように

(どうせ僕はだめなやつ)

自分でかけ続けた呪いを
君が解いてくれた
遠くの空を眺めるよりも
近くの君を見つめていたいと思えるようになった

少しずつ
少しずつ
僕を変えてくれた君
君はいつも僕の目をまっすぐ見ながら
シャッターをきっていた




「やっと私の気持ちに気付いた?」

僕が勇気を出した日、君は言った
君を見つめる僕と
僕を見つめる君

ファインダー越しでない君の瞳は
あまりにも近くて
それでも見つめていたくて
君の返事がうれしくて

多分一生君には勝てない
無敵な君が
僕にとっての大切な、特別な存在だから















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