元許婚に恋をする。
義母と義妹とのけじめ
義母と義妹とのけじめ
花野院家にやってきて数日。
「美織様、お茶が入りました。フミ」
「いいえ。あらもうお読みになったのですか?」
私に与えられた部屋にはたくさんの本が積まれている。これは宗一郎様と旦那様が準備してくださったものだ。私が女学校を辞めてしまったから勉学がもう一度したいと願い出たら本を手配してくださった。ここでの暮らしは、お母様が亡くなる前に戻ったみたいでとても幸せだ。それに公爵夫人にもお会いしたけどとても優しくて温かい人で本当の親子みたいな関係が築けていると思う。
「えぇ、楽しくて」
「それは良かったです」
積んである本をもう一冊手にとり開くとノック音が聞こえて入ってきたのはふゆだった。
「……ふゆ、どうしたの?」
「はぁ、はぁ……っあの、伯爵夫人である秋塚千代様と清子様がいらっしゃって、」
「……え」
「呼んでこい、って叫んでいらっしゃって……だけど、今旦那様も若旦那様もいらっしゃらなくて……もうすぐご帰宅予定なんですけど」
そう言ったふゆは、誰かに私を呼んで来いと言われてきたのか少し怯えているようだ。もしかしてこの家の使用人の方にも伯爵家のように怒鳴り散らしているの? ここは公爵家なのに?
「……行くわ」
「美織様」
そう私が呟いたと同時にいつ来たのか桜木が私の名前を呼んだ。
「桜木、あなたいつから……」
「すみません。美織様、行ってはなりません。私、桜木は宗一郎様に伯爵家の者がいらっしゃれば美織様には会わせるなと仰せつかっております」
「宗一郎様に?」
「そうです、なので美織様はここでお待ちください」
私がここから出て行ったら、何か危険なことがあるということ? でも、伯爵家……いや秋塚家の問題。こうなったのも私がしっかりお父様をお支えできなかったことも今の秋塚になった要因だ。
「桜木、……私は行くべきだわ。これは私の秋塚家の問題なのだから」
「……っ、ですが」
「このまま帰したら、あの人らはここの使用人に何か危害を加えるかもしれません」
あの二人ならやりかねない。天下の花野院公爵家に怒鳴り込んできているのだから……それに今、旦那様も宗一郎様も不在。家令である榊原さんはいるが、貴族ではない。
「旦那様や宗一郎様がいない公爵家を荒らされたくありませんから」
「わかりました、美織様。いえ、若奥様……私もお供いたします。榊原が今対応しているはずです」
私は立ち上がると桜木とフミ、ふゆを連れて彼女らがいる玄関へ向かった。玄関に近づくにつれ、もう二度と聞くことのないと思っていた声が聞こえてきた。
「――」
「――」
私はため息を吐きながら呆れてくる。私、こんな人たちに屈していたの……?
「こんなところで何をしているのですか、千代様、清子様」
そう静かに言うと、彼女らはこちらを向いた。
「はぁ! ……って、美織じゃない! あんたなんで公爵家に!?」
「お久しぶりでございます」
私が挨拶をしお辞儀をする。すると、千代様は苛ついているのがわかる。
「公爵様と若旦那様はどこにいるの!?」
「お義父様と宗一郎様は今は外出しておりますわ」
まだ本人の前で公爵様をお義父様だなんて言えないけどそう呼んでいいって言われていたしいいよね。
「!? なんで美織がいるのよっ……それに私の婚約者はどこ」
「清子様の婚約者様ですか?」
「えぇ、そうよ! 美織の婚約者だった花野院宗一郎よ!」
彼女は公爵家の次期当主様に向かって伯爵家の令嬢でしかない清子様が呼び捨てをするだなんて!
「ねぇ、早く出して! もしかして、美織泣きついたんじゃないでしょうね! 宗一郎はかっこいいし、公爵位と言う身分も申し分にないし!」
私は呆れしかない。こんな非常識なやつが腹違いの妹だなんて……
「黙りなさい、あなたは何様のつもりなの?」
「……っはぁ!? 私に口答えする気?」
「口答えですって? 何を言っているの――」
パチンと乾いた音が玄関に響いた。それは私が清子様によって平手打ちをされた音。
「美織様っ」
そう言って駆け寄ってきたのはフミだ。
「大丈夫よ、フミ。……慣れていることだから。下がっていて、あなたに怪我はさせたくないの」
以前はよくされていたが、最近は叩かれることのなかったからとても痛い。ヒリヒリする。
「あの方、宗一郎様は私の婚約者です。清子様の婚約者ではございません」
「……っ……」
「あなたのような人に宗一郎様のことは渡しません」
私ははっきりとそう言うと、顔を見たことあるな程度の使用人の方々が「公爵家の花嫁様なら断然美織様だよな」「あぁ、血筋的にも……」「下品なあの令嬢、平民の血が流れているし」そんな言葉が聞こえてきた。ヒソヒソ話しているようだったが、聞こえてますよ皆様……
「そんなの許さない! 許さない!」
まるで鬼女のような血相でこちらへ来て先ほどよりも強く、頬を叩いた。私はバランスを崩しよろけそうになった時、誰かに支えられた。
「……宗一郎様」
「ごめん、遅くなって」
宗一郎様は私にそう言うと微笑んだ。想像以上に距離が近くて、顔に熱が集まっていて熱る感じがした。けど、なぜか目を逸らすことも声も発することができなかった。
「……っ」
すると、後ろから「ふふんっ」と咳払いが聞こえてそちらを見ると旦那様と新一郎がいた。
「宗一郎、そういうことは後でしなさい」
「申し訳ございません、父上」
そう言うと宗一郎様は私を抱き上げこの場から離れた。
その後は、旦那様と新一郎が話を彼女らにしたらしく伯爵家は没落することになってしまった。
花野院家にやってきて数日。
「美織様、お茶が入りました。フミ」
「いいえ。あらもうお読みになったのですか?」
私に与えられた部屋にはたくさんの本が積まれている。これは宗一郎様と旦那様が準備してくださったものだ。私が女学校を辞めてしまったから勉学がもう一度したいと願い出たら本を手配してくださった。ここでの暮らしは、お母様が亡くなる前に戻ったみたいでとても幸せだ。それに公爵夫人にもお会いしたけどとても優しくて温かい人で本当の親子みたいな関係が築けていると思う。
「えぇ、楽しくて」
「それは良かったです」
積んである本をもう一冊手にとり開くとノック音が聞こえて入ってきたのはふゆだった。
「……ふゆ、どうしたの?」
「はぁ、はぁ……っあの、伯爵夫人である秋塚千代様と清子様がいらっしゃって、」
「……え」
「呼んでこい、って叫んでいらっしゃって……だけど、今旦那様も若旦那様もいらっしゃらなくて……もうすぐご帰宅予定なんですけど」
そう言ったふゆは、誰かに私を呼んで来いと言われてきたのか少し怯えているようだ。もしかしてこの家の使用人の方にも伯爵家のように怒鳴り散らしているの? ここは公爵家なのに?
「……行くわ」
「美織様」
そう私が呟いたと同時にいつ来たのか桜木が私の名前を呼んだ。
「桜木、あなたいつから……」
「すみません。美織様、行ってはなりません。私、桜木は宗一郎様に伯爵家の者がいらっしゃれば美織様には会わせるなと仰せつかっております」
「宗一郎様に?」
「そうです、なので美織様はここでお待ちください」
私がここから出て行ったら、何か危険なことがあるということ? でも、伯爵家……いや秋塚家の問題。こうなったのも私がしっかりお父様をお支えできなかったことも今の秋塚になった要因だ。
「桜木、……私は行くべきだわ。これは私の秋塚家の問題なのだから」
「……っ、ですが」
「このまま帰したら、あの人らはここの使用人に何か危害を加えるかもしれません」
あの二人ならやりかねない。天下の花野院公爵家に怒鳴り込んできているのだから……それに今、旦那様も宗一郎様も不在。家令である榊原さんはいるが、貴族ではない。
「旦那様や宗一郎様がいない公爵家を荒らされたくありませんから」
「わかりました、美織様。いえ、若奥様……私もお供いたします。榊原が今対応しているはずです」
私は立ち上がると桜木とフミ、ふゆを連れて彼女らがいる玄関へ向かった。玄関に近づくにつれ、もう二度と聞くことのないと思っていた声が聞こえてきた。
「――」
「――」
私はため息を吐きながら呆れてくる。私、こんな人たちに屈していたの……?
「こんなところで何をしているのですか、千代様、清子様」
そう静かに言うと、彼女らはこちらを向いた。
「はぁ! ……って、美織じゃない! あんたなんで公爵家に!?」
「お久しぶりでございます」
私が挨拶をしお辞儀をする。すると、千代様は苛ついているのがわかる。
「公爵様と若旦那様はどこにいるの!?」
「お義父様と宗一郎様は今は外出しておりますわ」
まだ本人の前で公爵様をお義父様だなんて言えないけどそう呼んでいいって言われていたしいいよね。
「!? なんで美織がいるのよっ……それに私の婚約者はどこ」
「清子様の婚約者様ですか?」
「えぇ、そうよ! 美織の婚約者だった花野院宗一郎よ!」
彼女は公爵家の次期当主様に向かって伯爵家の令嬢でしかない清子様が呼び捨てをするだなんて!
「ねぇ、早く出して! もしかして、美織泣きついたんじゃないでしょうね! 宗一郎はかっこいいし、公爵位と言う身分も申し分にないし!」
私は呆れしかない。こんな非常識なやつが腹違いの妹だなんて……
「黙りなさい、あなたは何様のつもりなの?」
「……っはぁ!? 私に口答えする気?」
「口答えですって? 何を言っているの――」
パチンと乾いた音が玄関に響いた。それは私が清子様によって平手打ちをされた音。
「美織様っ」
そう言って駆け寄ってきたのはフミだ。
「大丈夫よ、フミ。……慣れていることだから。下がっていて、あなたに怪我はさせたくないの」
以前はよくされていたが、最近は叩かれることのなかったからとても痛い。ヒリヒリする。
「あの方、宗一郎様は私の婚約者です。清子様の婚約者ではございません」
「……っ……」
「あなたのような人に宗一郎様のことは渡しません」
私ははっきりとそう言うと、顔を見たことあるな程度の使用人の方々が「公爵家の花嫁様なら断然美織様だよな」「あぁ、血筋的にも……」「下品なあの令嬢、平民の血が流れているし」そんな言葉が聞こえてきた。ヒソヒソ話しているようだったが、聞こえてますよ皆様……
「そんなの許さない! 許さない!」
まるで鬼女のような血相でこちらへ来て先ほどよりも強く、頬を叩いた。私はバランスを崩しよろけそうになった時、誰かに支えられた。
「……宗一郎様」
「ごめん、遅くなって」
宗一郎様は私にそう言うと微笑んだ。想像以上に距離が近くて、顔に熱が集まっていて熱る感じがした。けど、なぜか目を逸らすことも声も発することができなかった。
「……っ」
すると、後ろから「ふふんっ」と咳払いが聞こえてそちらを見ると旦那様と新一郎がいた。
「宗一郎、そういうことは後でしなさい」
「申し訳ございません、父上」
そう言うと宗一郎様は私を抱き上げこの場から離れた。
その後は、旦那様と新一郎が話を彼女らにしたらしく伯爵家は没落することになってしまった。