イルカの見る夢

 「僕とキスがしたいんだね? じゃあ、ちゃんと舌を出してねだって見せるんだ。真凛(まりん)

 「……はい、斗李(とうり)さん」

 夫に従順な真凛は汗ばんだ白い首に腕を回し、長いまつげを揺らして大きな瞳を伏せた。

 彼女がそろりと覗かせたピンクの舌を、斗李の舌がすかさず絡めとる。

 真凛とって世界で一番のご褒美は、斗李のキスなのだ。

 もつれあう舌からどろりと蜜のような重い液体が絶え間なく垂れたが、ふたりは止められない。

 意識が遠のいていくのに、真凛はヘーゼルの瞳から目が離せなかった。

 斗李の少し垂れたアーモンドアイが、彼女は堪らなく好きだ。

 程よく筋肉がついた細身の中性的な見た目とは裏腹に、すべてを見透かしているような落ち着いた声に真凛は全身で欲情する。

 それは斗李も同じで、彼女の姿、声、性格、行動、そのすべてに甘い刺激がもたらされるのだ。

 本人たちはもちろんのこと、誰がどう見てもふたりは運命の相手だった。

 接吻に満足したふたりは舌を離し、自然の流れで抱き合いながらベッドに倒れる。

 「本当に綺麗だ。真凛。動くね」

 「んっ。とう、り」

 彼女の返事を待たずして、彼は抽挿を速める。

 絶頂が近づき彼女が薄ら目を開いたそのとき、カタンと硬く冷たい音が部屋に響いた。

 反射的に目を開けた真凛に、斗李は笑顔で覗き込む。

 「真凛、どうした?」

 「今の音は……?」
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