久我くん、聞いてないんですけど?!
襲いかかるビッグウェーブ
「華さん。ちょっといいですか?」

ある日、昼休みが終わると久我くんが声をかけてきた。

「うん、どうかしたの?」

「はい。新商品の試作の参考になるかと思いまして、他社の色んなドリンクを買って来たんです」

そう言って久我くんは、両手の紙袋をゴソッと持ち上げる。

「えっ、こんなにたくさん買ったの?ちょっと待って。経費で落ちるかな…」

「大丈夫です。自分が飲みたくて買ったので」

「嘘でしょ?こんなに一気に飲める訳ないんだから。久我くん、初任給もまだ入ってないのに、そんなにお金使っちゃダメだよ。いい?額面よりも手取りって少なくなるんだからね?あんまり先走って使わないようにね」

「…分かってますよ、それくらい」

ん?今なんか、ムッとした?
拗ねたよね?

「じゃあ会議室でミーティングしようか」

立ち上がると、久我くんもついてくる。

美鈴ちゃんは、ちょうど課長に呼ばれて席を外していた。

私と久我くんの二人なら、一番小さな会議室で充分だ。

私は廊下を端まで歩き、空いている6人用の部屋に入った。
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