久我くん、聞いてないんですけど?!
突然の告白
「蒼井さん。新商品についての詳細とキャッチコピー、いくつか案を用意しました。目を通して頂けますか?」

「分かりました、ありがとう」

私と久我くんのデキル関係は続いている。
デキルであって、デキてるではない。

「蒼井くん、ちょっと」

「はい」

珍しく課長に呼ばれた。

「どうかな?久我くんの様子は」

「はい。自ら進んで考えて行動してくれます。パソコンにも長けていて、資料作りやデータの分析も、私よりはるかに戦力になります」

「そうか、なかなか良いコンビだな。これからもこの調子で頼むよ。歓迎会については話してみた?」

「いえ、まだです」

「聞いておいて。こちらとしては、ぜひやりたい」

「かしこまりました」

お辞儀をしてデスクに戻る。

「ね、華さん。久我くんの歓迎会のことですか?」

美鈴ちゃんが前のめりに聞いてきた。
久我くんも、何の事かと顔を上げる。

「そう。もう久我くんが来てから1か月以上
経ったしね」

そう言うと、久我くんに説明する。

「うちの会社は、強制参加の飲み会はNGなの。やりたかったら、個人的に声をかけてやるってスタンス。だから久我くんの歓迎会も、私達からは誘わない。久我くんがやりたいって思うならセッティングする。そんな感じなの。どう?別にやらなくてもいい?」

最近の若い人は、飲み会は敬遠しがちで、会社のこの方針はありがたいらしい。

てっきり久我くんもそういうタイプだと思っていた。

「僕は、皆さんさえよろしければ、一緒に飲みに行きたいです」

「えっ、意外!どうして?上司と飲んだって、面白くないよ?」

「蒼井くーん、聞こえてるよ」

すみません、課長。
空耳です。

「じゃあ、私がセッティングします!」

美鈴ちゃん、生き生きしてるわ。
当分仕事は放棄ね。
まあ、いいでしょう。
よろしく頼むよ。

という訳で、早速その週の金曜日に、希望者を募って久我くんの歓迎会が行われた。
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