久我くん、聞いてないんですけど?!
「初めまして、下川社長。わたくしは蒼井 華と申します」

歓談の時間になると、私は真っ先にお父様に挨拶しに行った。

「やあ!君が華さんか。初めまして、清の父の篤です。今夜はよく来てくれたね」

「こちらこそ、お招きありがとうございます」

「いやはや、なんとも素晴らしいお嬢さんですね、蒼井さん。本当にうちの清に嫁がせてくれるのかね?」

「あ、いや、その…」

父さんは、苦虫を噛み潰したような顔でしどろもどろになる。

先程の清の態度を見て、どうやら頭の中が真っ白になったらしい。

もしかして変わり者なのか?と予想していたが、まさかここまでとは思っていなかったようだ。

「華、お前本気で結婚する気か?!」と肩を掴んで揺さぶられたが、私の意思は変わらない。

むしろお父様のお人柄をうかがい知ることができて、少々安心していた。

お父様になら、私の要望も聞き届けてもらえるだろう。
< 30 / 39 >

この作品をシェア

pagetop