たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~
プロローグー私の日常ー


私の朝は早い。

森奥ならではの木漏れ日を窓から受けて,伸びをしながら文句も言わず起き上がる。

顔を洗い,朝御飯を食べて,畑に水をやりに行く。

ガチャリと扉を開いて外に出たその時



(いいか,3秒後の合図で飛び出せ)



もぞもぞと小さな声が耳に届いた。



「はあ,今日はハズレの日」



私は右手の平を上に向けて,ボウと火を発現させる。



(全部聞こえてるって言うのに……私の地獄耳を舐めないでよね)



情けの代わりに大人しくカウントを待っていると,目の前に黒い影が2つ。

掌から放射された灼熱の火炎は,彼らの絶叫をお供にして彼らを少しずつ燃やしていった。

それを眺めながら焼き続ける私の後ろに,また全身黒の影が1つ。

私の脇腹を狙って,長い刃物を振っていた。



(まだまだ未熟ね)



その目に映るのは,一瞬にして命を燃やした仲間を想う怒り。

そして後戻りできない恐怖。

私は流し見たその顔から視線をはずし,また燃える二人へ向き直る。

そして。

ーザズクッッ



「うが……あ,ぁぁあぁあ…!! …」



反対の手で発現させた氷で,まだ生きている唯一のその人の,鳩尾を貫いた。
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