たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~
私は7つの時まで,ずっと独りだった。
子供の身には分不相応な,1軒の家だけを与えられて。
今よりずっと治安の悪かった街で,捨て子として育っていた。
言葉も街で覚えた短文しか話せない,けれどどれだけふらふら歩きさ迷っても,お腹が空いたらその家に戻る。
そんな生活の繰り返し。
周辺に住む住民が,娘には出来ないけどと,代わる代わるご飯を分けてくれて,たまに頭から水を掛けてくれて。
その年まで生きながらえることが出来ていた。
皆大変だった中で,とてもありがたいことだと思う。
騙すことも奪うことも可能だった私を,皆で優しく育ててくれた。
何を言っているのか分からなくても,それだけは理解していた。
そして7つの時,この国の最初の運命が訪れたのだ。
運命を探し歩く,他国の司祭,お義父様が。
ばったりと会った私を見て,驚いた顔をしていた。
そして戸惑いなく地面に膝をついて,私の頬に触れて。
『君からは大きな運命を感じるよ。きっと私の運命とも繋がっている。どうだい,私と一緒に来るかい?』
きっと優しい人だと思った。
この人なら守ってくれる,ずっと一緒にいてくれる。
不思議と,そう信じることが出来た。
ぼんやりとその手を握ると,温かくて。
私はお義父様の苗字と,初めての自分の名前を貰って。
エヴァ·ルイスとしてこの国に誕生した。