たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~
あんなに薄い皮なのに,もちもちするのだから不思議な食べ物だと思う。
私はさっそく,ぱくりと口に含んだ。
ふんわりとしたホイップの感触に,思わず笑みがこぼれる。
「おいしい……ダニー,ありがとう。ごちそうさまですっ」
そのままダニーを見れば,大きな口でクレープにかぶり付いているところ。
「おいしい?」
ちょっとイタズラに問いかけると,ダニーは口の端を拭いながら,こくんと頷いた。
クレープを支えている専用の紙を破きながら食べ進めて,私達はそれぞれ無事に完食する。
「もうお腹一杯だよ~! ふふ。おばさんのクレープ見つけられて良かったね」
目的のないお散歩のようなデートも,気楽で楽しい。
「ねぇ,あっちの方も行ってみない? いつもはあまり行かないでしょ??」
「……確かに。1人でもあんまり行かないな。見に行ってみよう」