たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~

おとぎばなし





むかしむかし,あるところに。

魔女と呼ばれる,妖艶で奇怪な魔法を使う存在がおりました。

魔女は近づく男を足蹴にし,彼女の使う魔法はどこの誰にも恐れられていました。

人の形に化ける魔女は,同じく奇怪な魔法を使う隠された村の出身で,時折どこからともなく人々の住まう国までやって来ていました。

ある日,魔女はとびきりのお洒落をして,暗い路地にあるbarを訪れます。

そこは,魔女が愛してやまない男が通う,特別なbarでした。

男はとても純粋な人間で,魔女を魔女だと知らない,その国唯一とも言える稀有な人間です。

男は気さくに魔女へと話しかけ,いつも優しく笑いかけました。

周囲の人間は,いつ彼が焼き殺されるのかとひやひやしていました。

守ってやりたいと,人に愛されやすい男は沢山の人に想われていました、

けれど人々の想いと裏腹に,魔女はひっそりと,その男の事を愛していました。

ひっそりと,滑稽にも。

誰にも知られず,大事にしているつもりでした。

そんな時です。

barに初めて訪れた客が,魔女を見つけてほんの少しだけ悪く言いました。

何も知らない可哀想な男は魔女のために怒り,けれど既に酔っていた男に殴り飛ばされてしまいます。

魔女は自分のお気に入りの存在を傷つけられ,大変激怒しました。

その瞬間,誰も見たことのない爆発が,barを包み,大炎上。

魔女はすかさずやってきた兵士達に武器を向けられ,難なく応戦するも。

魔女の愛する男は,兵士によって救出されます。

それにより,引き離された魔女は怒り心頭。

魔女の身勝手に,大勢の人間が大怪我を負いました。

そしてあろうことか国王を人質に取り,周辺の森に大規模な火を放ちます。

けれど兵士達の必死の働きにより,魔女は無事に倒され。

発見した魔女の村は無事に焼き払われました。

兵士達は数百年の恐怖を打ち消す,まさにヒーロー。

その日を境に,国には平穏が訪れます。

大人は子供へと口々に言いました。

"魔法の使い道を誤っては行けないよ"

人を傷つける魔女のようになってはいけない。

魔法は全てに等しく与えられる,神のご加護であると。

国王を救った1人の兵士は,その後お姫様と結婚し。

沢山の祝福に包まれて,次の王様になりましたとさ。

おしまい。



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