たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~
「エヴァ·ルイス」
突如,その腕が私から離れる。
お義父様が,お義父様のくれたフルネームで私を呼ぶときは,決まって何か伝えたいことがあるときだ。
やっぱり何かあるんだろう,こうして私を呼び出した理由が。
運命に纏わる何かが。
「君はやはり,王命を果たすだろう。あるいは,それそのものが君の運命なのだろう。今までの君の成長全てが,君を作っている」
どきりとした。
魔女を倒す,それは魔女を殺すと言うこと。
私が迷っていたことを,見透かされているような気がした。
けれど,お義父様は私が王命を果たすと言う。
王様の依頼は,命令も同じ。
命令は,ただ1つ,魔女を討つと言うことただそれだけ。
(私が,それを果たすの? 魔女はやっぱり,悪い存在なの? 絵本の違和感は気のせいで,もしくは今回の事とは関係ないの?)
私の運命とは,何なのだろう。
生きてきた今までの全てが,あの依頼に帰結するなどとはとても思えない。
「近々,運命の根幹が動き出す」
信仰に生きる国からやって来た,運命を読む司祭。
お義父様のそれは,予言にも近く。
初めて,小さな恐れを抱いた。