たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~
「後悔しないようにしなさい,エヴィー。私は何故か,胸騒ぎがするんだよ。こんなことは今まで1度だって無かった。君を育てたことを,私に後悔させないでおくれ」
どうしてお義父様が後悔するの?
そう聞くことは出来ない。
それはきっと,お義父様が運命を理由に私を拾ったから。
胸騒ぎ。
(とっても奇遇。だけど,不思議とは思えない)
初めて父娘らしい感覚に囚われる。
(お義父様,私もね。なんだかとても,嫌な予感がするの。それこそ,私が後悔に泣くくらい嫌なことが起こるんじゃないかって)
「愛しているよ,エヴィー」
まるで,別れの言葉のよう。
お義父様が小さく震えている。
安心させるように,私はその肩を抱き締めた。
「私もよ,お義父様」
お義父様に好いた人がいたことは知っている。
けれど,教会での忙しさや,成長の乏しかった私のために,私へ母親を作ることを諦めたことも。
私がお義父様を愛さないはずなど無かった。
愛していない瞬間など,一度たりともなかった。