たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~
私は,意図せず期待に応えすぎたのだと分かる。
人間に化ける魔女。
命あるものに魔法を向けたことなど無いのに,突然そんな存在に向けることが出来るのだろうか。
(殺すつもりで,エルさんに教わった魔法を利用することが,私に出来るの……?)
皆が私を見ていた。
口が乾く。
(心配させちゃダメ。心配させちゃ,だめ。これはずっと前から決まっていた,変わることの無いこと)
「わかり,ました」
思わず微笑んで,私は炎を発現させた。
魔法は,味方。
直ぐそこにある大気も,私の味方。
なのに,なのに。
(どうしてこんなに,悲しい胸騒ぎがするんだろう)
焦っちゃ,だめだ。