たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~
「身軽だね,ベッキー。君は身一つ,それだけでいいの? 後で寄越せって言っても,君にあげる分は何もないからね」
余計な空間の無い真っ黒なコーデをピシッと決めたノアは,ベッキーに話しかけながら出てきた。
小さくてシンプルなポーチを腰からぶら下げていて,ぽちゃんと音がするから,飲食物を携帯しているのだろう。
「あら。いいのよノア。どうせエヴィーにはあげるんでしょう? どうしても困った時にはエヴィーから貰うわ」
「……君って人は本当に」
ふふんと言い返すベッキーに,ノアは肩をすくめた。
どこか怒っているように見えるけど,私にとってはいつものこと。
ノアは何故かベッキーにとても弱いのだ。