たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~
最期のカウントまでビクビクしていたのに,その道を止めなかった勇気ある女の子は。
絶叫を空に轟かせ,私の前から姿を消す。
私も約束通り,加速するトロッコの加速を忘れずに続けた。
「……ふ。そろそろ着いた頃かしら」
(黙っていることはあなたの身を守ることにもなるのよ,お嬢さん。
『おかしな女の人と会いました! 楽しかったです!』なんて言おうものなら,私の大切だなんて勘違いされて,捕らえられてしまうわ。せっかく殺さず逃がしてあげたのに)
久しぶりに他人と関わったからだろうか。
理由の分からない高揚と虚しさが,同時に私の身体を侵食していた。
冷たい朝の空気だけが側に残り,私から何かを巻き上げるように吹いていく。