たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~
(この森の向こうにある国って,なんて名前だったっけ)
夜のうちに奇襲をかける計画だから,遠くではなく隣接した国にいるのだろうと当たりをつけて,ザクザクと進んだ。
「んもう,こんな夜中にやんなっちゃう。大事な時を前に足でもくじいたら笑い話にもならないわ」
「確かに。ちょっと暗すぎるかな」
ジーとチャックの音がしたかと思えば,目の前に細く光が当てられた。
「ノア,そんなの持ってきてたの?」
「当たり前だろ。夜の森なんて大体こんなもんなんだから。来る前にそれでいいのか聞いたのに,そのままきたのはベッキーだろ?」
「何よ。珍しく褒めたのに。出すのが遅いとでも言えば良かったのかしら」
そんな2人に笑っていると,ノアが振り返る。