たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~
「ま,あね! 今は魔法に絞ったとは言え,鍛練はかかさなかったから。山道なんて大したこと無いよっ。ほら私,昔からおてんば娘だったし!」
「いや,知らないわよ昔のエヴィーなんて」
ベッキーにも突っ込まれて,私はえへへと笑った。
「ねぇ,隣の国はどんな所かな。皆は行ったことある? 帰りに何か食べたいな」
「? 隣? そんなに有名な食べ物なんてあったか?」
「なぁに,思ったより余裕そうじゃないエヴィー。でもお金なんて持ってないわよ私」
「僕も。ごめん,最悪投げ捨てられるようなのしか持ってきてないな」
それは,森の中腹での会話。
そろそろ,慣れた道が終わって知らない山道になる。
(なんだろう)
皆からわざわざ行く,みたいな空気を感じて,私はきょとんと返した。
皆からも同じように返ってきて,冗談を言ったのだと思われていたのだと分かる。
話を変えようと,私はまた別の話題を提示した。