たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~


「震えながら歩いておいてよく言うよ。様子がおかしいのは誰にだって分かる。何にそんなに怯えてるんだ,エヴィー」

「怯えてなんて」




ないわけ,ない。

本当はものすごく,今すぐにでも泣きたい。



「エヴィー。この前も言ったけど,僕たちには自分で選択するだけの力がある。今日が無理なら明日がある。やりたくないならどこか遠くに逃げ出せる」



真っ先に,皆が躊躇してしまう言葉を発する優しい人。

この日のために沢山費やした1人でもあるノアが,とうとう口にする。




「教会に帰ろう。もしくは,今日だけでも行き先を変えよう。隣国だっていい。僕たちはどこへでも着いていく」



私を見据える,強くて優しい瞳。

じわりと瞳が潤った。

本当は,今すぐにでも帰りたい。

けど,それじゃだめなの。



(自分の目で確かめるまで,ずっと不安でいないと行けなくなる)



「ううん,もう大丈夫。今度こそ,本当に」



(証明しないと)

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