たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~
(話は聞いてくれるはず。でもどうして,嫌な予感がするの)
早く離れないと。
もう来ないと,誤解だったと分かって貰えれば済む話なのに。
戸惑いながらも,私の言葉に危機感だけを感じる皆が,ようやく走り出す準備をした。
1歩踏み込む。
その瞬間に。
はっと振り返った私は魔法を発現させた。
引っ掻くような音,固いものが割れる音,そして砕ける音。
パラパラと盾に使った魔法の下に,細かい氷が落ちていく。
まだ私達の姿が見えていない魔導師は,予想外だったのか様子を窺うようにぴたりと足を止めた。
どくどくと,信じられない気持ちよりも早く心臓が鳴る。
エルさんに鍛えられた私の発現速度がなければ,本当に危なかった。
今も足元に見える氷の欠片は,どれも鋭利に尖っている。