たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~
「私が彼女のファンだったからですよ。どうせ散るなら,近くで眺めたい。至極当然の感情でしょう。それに,私が王に逆らわない理由ですが,それはもっと簡単な話です。王もまた,彼女に劣る権力者であり,私はその更に下の凡人でしかないからです」
(この人。おかしい。……なら,せめて)
「放っておくことは,出来ないの? なにもしなければ,あの人だって……」
「ああ。それについては,信じないのは私ではありません」
自分に言われても困ると言うように,すげなく返される。
「僕たちは降りる。意味のない人殺しに貸す手はない」
「ご勝手に。但し1つ善意で教えて差し上げます。たとえフリでも挑み続けた方がよろしいでしょう。周辺国からやって来たあの"司祭"の命を数日伸ばすくらいにはなりましょう」
「え……」
思わず漏れた。
成り行きを見守っていたダニーが立ち上がって,掴みかかろうとする。