たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~







そんなの,無理だよね。

パサリとお義父様に貰った外套羽織る。

それはたった1つ夜を越えた夜の事。



(確か,白より黒が好きだといった私のために,どちらも取り入れた外套を作ってくれたんだよね)



お義父様は私のからだが大きくなる度に,この外套を特注してくれた。

だからこの外套を羽織る瞬間が,父娘の関係を一番強く感じる。

月夜の下,教会を一人飛び出した。



「ごめんね皆」



(ごめんね,ダニー)



ちょっと,行ってくるよ。

手首を擦る。

ようやく慣れてきたブレスレットの感覚がなくて,もどかしかった。



(折角一昨日燃えなかったブレスレットが汚れたりしたら悲しいもの)



それにちゃんと帰るつもりでいるんだから,ブレスレットにはそれを託したぬいぐるみと待っていて欲しい。

その方が,心強いから。

ダニーの代わりに,ブレスレットのない手首へと口付ける。

向かう場所なんて1つしかない。



(私はお義父様も,エルさんの事も。どちらの命も助けたい。どちらかを見殺しに,どちらかを殺すなんてとても出来ない)



その1番確実で近い道が,これなのだ。

私にしかきっと出来ないことなんだ。



『君はやはり,王命を果たすだろう』



今になって,お義父様の言葉が突き刺さる。



(ううん。違う。違う。私は何があっても,何を失ったとしても。それを回避するためにエルさんを殺したりなんて,しない!!!!!)



私は誰かに見つかる前にと,森までの道を急いだ。

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