たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~


ーコンコンコン

予想だにしない戸の音に,私は次の動きを逡巡する。

まるで近所の庭に洗濯物を飛ばしてしまった時のような,はたまた仕事で郵便物を届けに来た人のような。

そんな気楽な音が,私の返事を待っていた。

近くのマントを身に纏い,フードを深く被る。



「……どなた?」



魔法を発現させる準備だけに留めて,ドアノブを回すと



「わっ……お姉さん? えへへ,こんにちは」



そこには昨日別れたはずの()が,あの能天気な顔で立っていた。



「わざわざ時間をかけて訪ねてきたの? もう来るなって言わなかったかしら」



(昨日も来る時は完全に迷っていたはず。帰りもトロッコだったのに,自力で真っ直ぐやって来るなんて)



「言われてないよ? あれ,だめだった……?」

< 17 / 238 >

この作品をシェア

pagetop