たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~
「おねがい! 話を聞いて……っ」
とうとう,エヴィーが自分の魔法を惜しみ無く使って足場を作り,上がってくる。
私のたつ場所と,暮らす家と,同じ高さまで。
腰の辺りまでの壁を間にはさませると,エヴィーはそこで立ち止まった。
「この間は,ごめんなさい。悪い魔女を倒せと言われていたのに,それがエルさんの事だなんて思いもしなかったの」
そうでしょうね,と。
偽物でなかった期間に思う。
もし偽物であったとしても,弟子をやっていたら分かるはずなのだ。
たとえ4人だとしても,私には敵わないこと。
「国に,戻ろうエルさん。王様との話し合いだって手伝うし,私だってエルさんの事を守れると思うの。それから,エルさんの手を借りたいことも」
「帰って」
必死に,言い募っているのは分かっていた。
けれど到底受け入れられず,私はすげなく断る。
聞くだけ無駄だと思った。
何も知らないエヴィーが,可哀想にすら思える。
昔の自分のように,都合よく利用されている。