たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~
「エヴィー。"森の魔女"を名乗ったのは,私が先なの。どうして魔導師でも魔法使いでもなく"魔女"を選んだのだと思う?」
エヴィーは小さく声をあげて,分かりやすく戸惑った。
(それはね,私が明確に。城を,国を,王家を……敵と見なしたからなのよ)
きっと,エヴィーは知らない物語。
「古の魔女と言う存在を題材にした,絵本があるの」
エヴィーがはっと息を呑む。
本の中で,魔女は得体の知れない,人間とは全く違う別の生き物で。
人間を惹き付ける魅惑の塊で。
魅力的な彼女がしたことと言えば,自分を,愛した人を守ろうとしただけで。
人を殺したことなど無く。
ただの1人の少女だったけれど。
悪い女として,奪われた。
それは魔法に関するからと,ハリーが王家からこっそり持ってきた絵本。
当時は2人して違和感を覚え,同情したものだけど。
王家にのみ残る絵本は,当然と言うべきか普通の絵本とは違うものだったと後から知った。