たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~



「エヴィー。"森の魔女"を名乗ったのは,私が先なの。どうして魔導師でも魔法使いでもなく"魔女"を選んだのだと思う?」



エヴィーは小さく声をあげて,分かりやすく戸惑った。



(それはね,私が明確に。城を,国を,王家を……敵と見なしたからなのよ)



きっと,エヴィーは知らない物語。



「古の魔女と言う存在を題材にした,絵本があるの」



エヴィーがはっと息を呑む。

本の中で,魔女は得体の知れない,人間とは全く違う別の生き物で。

人間を惹き付ける魅惑の塊で。

魅力的な彼女がしたことと言えば,自分を,愛した人を守ろうとしただけで。

人を殺したことなど無く。

ただの1人の少女だったけれど。

悪い女として,奪われた。

それは魔法に関するからと,ハリーが王家からこっそり持ってきた絵本。

当時は2人して違和感を覚え,同情したものだけど。

王家にのみ残る絵本は,当然と言うべきか普通の絵本とは違うものだったと後から知った。

< 172 / 238 >

この作品をシェア

pagetop