たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~
「エヴィーが気にしていたのはエルヴィスさんの事だけじゃない」
はっとして,机の上のぎっしりと文字で埋まった紙を2人が見る。
エヴィーは魔法を大事にしていた。
その魔法をくれたのは,エヴィーの大事なエルさんという師匠。
危険の迫っていたのは,エルヴィスさんだけじゃない。
悔しいけど,僕たちではエヴィーの役に立つことは出来なかった。
「エヴィーは森の女性に会いに行ったんじゃないか? 彼女を隔離された場所から救い出すために。そして,僕たちに味方して貰うために」
ブレスレットを置いていったのは,また魔法を向けられる覚悟があったからか。
いや,戻ってくるという僕たちへのメッセージだろう。
「どうする,ダニー。今すぐ追いかけるか,エヴィーを信じて昼まで待つか」
エヴィーが僕たちの目を抜けて出掛けるなら,もうとっくの昔に教会を出ているはず。
だから追いかけたところで,エヴィーと森の女性との会話に混ざることは出来ない。
寧ろ今戻ってきていないのが遅いくらいだ。