たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~
「間違いない。エヴィーはこの向こうに向かったはずだ。何故森の女性が今になって他人を阻むような真似をするのか分からないけど,とにかく急ごう……!!」
壁を沿って走ってみても,やはりどこも壁で覆われていた。
壊そうにも硬すぎるし,壁が崩れるかもしれないことを加味すると素人が手を出していいものじゃない。
けれど同じ高さまで足場を作れるほど,僕にもベッキーにも大きな魔力はなかった。
「住宅の無い方に行ってみよう。僕は一通り見て回るから2人は城へ壁を壊せそうな物を」
「で,でも城は」
僕はベッキーの名前を呼んで振り返る。
「数年かけて僕たちを育てようとしたくらいだ。"魔女討伐"において,いかなる助力も惜しまないはず」
実際にそうするかは関係ない。
壁があの女性によって造られたのなら,すんなりと協力するだろう。
「分かったわ」
「行くぞ,ベッキー」
僕は2人が戻るまでの間,左右出来るだけ多くの壁を見て回った。
けれど全てほぼ均等の硬度や厚みを持っていること以外に,分かることはない。