たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~
もぐらのような形の先端には,見るからに頑丈そうな直径1mのドリルが嵌まっている。
「使い方は教わってきた。ここでいいのか? ノア」
「ああ,うん。ここなら何かあっても対処できるし,そうそう人に見られることはないよ」
ダニーが何かボタンを押した。
そのままドリルを前に,勢い良く壁に突っ込む。
(この,脳筋……っ)
人目を避けた意味など無いとでも言うように,壁の衝突は大きな音を発した。
やがてドリルは止まる。
「ダニー。止めろ。この作戦は中止だ」
壁はほんの数ミリ小さな丸型に凹んだだけ。
逆にドリルの先端が丸まり,壁に埋まっていた。