たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~
(でもさ,ダニー。僕は嫌な予感がするんだ。それも経験上よく当たるね。今行けば君は,いや僕達は)
ー森に足を踏み入れた途端に命を落とすだろう。
それに対抗するだけの力がなければ,人間にとっての虫けらのように命を散らす。
僕はモブで構わない。
物語のヒロインに,無謀にも恋をした憐れな道化で構わない。
けれど,そんな僕にだって。
(君の命をみすみす捨てさせないくらいの行動は取れるんだよ)
「なるほど。見事な手腕だ」
目を細め,独り言のように呟く男の言葉が耳に届いた。
一生のうちには相容れることの出来ないであろう男を見やり,僕は放つ。