たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~
「僕は必ず,エヴィーを見つける」
男は軽薄に笑った。
「今まで派遣され,帰らぬ人になった人間が沢山いる。……その人たちは,普通ではないんじゃないのか。僕は自分の魔法を極めるために,その人達を何人か借りたい」
「……いいでしょう。寧ろ,私があなたを欲しいくらいですよ」
ずっと。
魔女の話を聞いてから,派遣されたのは魔法騎士かそれに準じる存在だと思っていた。だから一般市民の僕達の耳に入ることも無いのだと。
(だけど,そうじゃない)
巻き込まれて初めて気づく。
悪意や敵意を持たない魔女のもとへ足を運んだ存在も,目の前のずっと僕らを監視していた男も,どちらもきっと普通の存在ではない。
魔女が,魔女じゃなかったとエヴィーを信じるのなら。
魔女を魔女に至らしただけなのなら。
元は純粋な一般市民の少女だったと言うのなら。
そう
(この国は,僕が思うよりずっと汚れている)
きっと遥か昔から,ずっと。
僕の数秒前の交渉が,図らずともその存在を肯定するような意味を持つとしても。
(僕はエヴィーを取り戻したい)
たった1つ,僕らの希望の光。
エヴィーがいれば,世界は廻る。
エヴィーがいれば,きっとこの国は救われる。
彼女さえ,笑っていてくれれば……