たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~
『今年は誰か告うやついるのかなーー』
『なんの話だよ』
たまたま耳にした誰かの噂話。
『しらねーの? 卒業したら皆散り散りになるだろ? そうならねーように,もしくは知らない間に取られないように。プロポーズすんだよ』
『あー。卒業間際の伝統行事みたいなやつか』
『そーそ。今やその伝統のせいで,焦ってプロポーズするしかないやつとかも多いよな』
皆がそう,なら,僕にも伝えられる気がした。
何より,僕が誰よりも早く伝えなきゃ,たとえ友達が僕しかいなくても,十二分に魅力的な彼女は何人の男に言い寄られても不思議じゃないと思ったら,僕は知らない感情に駆られた。
もう子供じゃない。
そんな意識は,そんな日のずっと前から持っていた。
彼女にプロポーズしようとする決意を,王子として,僕は父王に話した。
彼女の功績や実力,聡明さがあれば,反対されるはずもないと思っていた。
けれど。
父王は色のよい顔をしなかった。
寧ろ嫌そうですらあって,なんとか説得すると,少し考えて
『なら,賭けにしよう。ハリエル』
そう僕に持ちかけた。