たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~
未来とは過去
彼女へ馳せる想いーノア·クリステルverー
ノア·クリステルside
「おぅああぁぁぁぁあぁぁあ!!!!!!!!」
また一人,また一人ねじ伏せられる。
意味のない特訓を積み始めて,エヴィーの捜索を始めて。
2年,2年だ。
未だエヴィーは見つからない。
僕が見つめるのはエヴィーの笑顔などではなく,雄叫びをあげて突進するダニーの姿。
「やけに雑な動きをするな」
ぽそりとした呟きを,どこからかベッキーが拾う。
「エヴィーの夢を見たのだって」
ふいと顔をそらしながら,ベッキーは休憩する僕の横にならんだ。
「そう……」
僕は少し気まづいような気分になって,ベッキーを空気だけで窺う。
ベッキーはこの2年で,とても魔法の精度をあげた。
対人訓練と,エヴィーの持ち帰った知識の賜物だ。
だけど,ベッキーの変化はなにも喜ばしいことばかりじゃない。
あんなに口うるさくて,僕をからかったりもしていたベッキーはすっかり大人のようになってしまった。
笑顔が減ったとは言わないけど,とても静かになって。
自分を圧し殺して,何かに耐えて。
落ち着いた喋り方をするようになった。