たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~
(声が震えてる)
指摘しないのが僕の優しさだ。
その似合わない涙も,落ちない限りは見ないふりをしてあげる。
それは僕が2人のそれを,エヴィーを裏切るようなことではないと思ったからだった。
「っあ」
ベッキーの声と同時,僕は腰を浮かして走り出す。
慌てて剣を抜き,僕はダニーの前に立ちはだかった。
つんざくような,命を奪う音が響き渡る。
「っダニエル!!」
僕が目の前で名前を呼ぶと,ダニーは目を大きくして僕を見返した。
「……悪い」
強く僕がその目を見つめると,少ししたのちにダニーは瞳を落とす。
「いや,分かってる。……ダニーは少し休んでろ」
僕も首をふって,抜いた剣を鞘におさめた。
(どんな夢を見たのか知らないけど,珍しいこともあるもんだな)
ーダニーが人を殺しそうになるなんて。