たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~
「辞めたいときは勝手に出ていきなさい」
「はい……!!!」
私はふ,と口元を緩めた。
握手は交わさない。
「アリエル·アーシア。私の名前よ。私の言葉を素直に聞くなら,あなたを弟子と認めるわ」
「エル……エルさん!! ほんと?!? エヴァ·ルイス。エヴィーって呼んで!」
(素直で華やかで,可哀想な子。エヴィー,形だけでも"善い"師匠でいてあげる)
決してあなたの口に入ることのない,畑の野菜が,"私の殺した"人間の骨から養分を吸って育っているだなんて知ったら。
(あなたはきっと,泣きじゃくって怒って悲しんで,逃げ去っていくのでしょう)
これはその時までの,ほんの戯れ。
こうして,私たちの日常が始まった。