たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~
「……っっ,ふっ……なんで,なんでよッ!!!!!」
確かに,全力で挑んだはずだった。
もちろん,嫌々ながら僕も。
悔しさに,ベッキーが涙を流している。
僕たちは3人同時でありながら,たった1人のハリエル皇太子に負けてしまった。
その一連の出来事を説明するなんて,そんなことするまでもない。
至って真剣な顔で相手をしてくれた皇太子によって,10分ともたずしてやられたのだ。
確かにその実力は森の女性を彷彿とさせる。
10分より少ないものの,少しでも抵抗できただけ僕たちも成長したと言うべきか。
けれど悔しさは僕もベッキーと変わらない。
「……ごめんね,実は君達にお願いがあるんだ」
ベッキーは目元を脱ぐって皇太子を見た。
何を言うのか,僕も少なからず緊張してしまう。
「僕を先頭に立てろと言われてるだろうけど。……最初は3人だけで彼女の前に出て欲しいんだ。僕を一緒に連れていってくれれば,ダニエルでもベッキーでも,リーダーとして僕は言うことをちゃんと聞きます」
呆気に取られる僕たちを前に,皇太子だけが困ったように笑っていた。
「短い間だけど,どうかハリエルと気楽に呼んでね」