たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~
森の魔女の家
理屈で学ぶ魔法の世界。
ーコンコンコン
「エルさーん!!!」
快活な声が息も切らさずやって来る。
そっと立ち上がって扉を開けてやるとエヴィーが家の中に入って来た。
「おはようございます,師匠。はいこれ,ちゃんと持ってきたよ!」
「ありがとう。そこに置いて。
あぁそれから。あなたから見て,街で何か変わったと思うことはない? ……そうね,森が封鎖されてから」
尋ねると,エヴィーは少したじろぐ。
「え? そんなに前……? うーん,どうだろう。街では特に何も変わってないと思うよ」
「そう。明日からも毎日同じことを聞くわ。少しだけ気にしておいて」
私がそう言うと,エヴィーは不思議がりながらも元気よく返事をした。
(街では……?)
ふと引っ掛かるも,私の質問に合わせたのだとそれ以上は気にもとめない。
「エヴィー。朝食はきちんと済ませてきたの?」
「うんエルさん。早起きは得意なの!」
エヴィーは得意気に笑った。
そう言えば一昨日初めて顔を合わせた時も早朝だったと思い出す。