たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~
また,僕の名前を呼ぶ。
乞うように,悲しく。
だけど僕は,いくつか否定しなくちゃいけない。
「僕は,君を恨んだことなんて無いよ,アリー。ずっと,ずっと」
「……恨むほどの価値も,ないってこと……? どうして? なら,どんな理由で私を」
好きだった。
その言葉は,遮られ。
アリーは僕を,苦しそうに真っ直ぐと見た。
「殺そうとするの……っ!!!!!」
命を狙われたことより,その動機や心情に傷付いている。
それは,痛いくらい伝わったけど,それでもわからない。
だって,アリーはそれが長年続いていることのように絞り出して吐いたけど。
「「違う…!」」
僕はそんなこと,1度だってしていないし,考えたこともない。
重なった声は,森の奥からだった。
たまらずあげたと見られ,ノアと目が合うと気まずそうな会釈で返される。
「何が,違うのよ……」
まだ溢れない彼女より先に,僕の涙があふれた。
アリーの瞳が,またひとつ深く揺れる。