たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~
「アリー。帰ろう。ミス クレアにも会って,そして……今度こそ安心して暮らせるように,どこにでも手配するから。こんなところで独りでいるのは,いくら君でも,もう耐えられないんだろ。誰も……君を忘れてなんかないから」
「その必要はないわ,ハリー」
突き刺すように,アリーが発した。
「でも」
「森に残ると言う意味じゃない。私の願いは……あなたの口から,言葉を聞くことだった。もう一度,あなたに逢うことだった。あなたに……好きだったと……今も思い出せば出すほど好きだと……告白することだった」
アリーは最後まで笑顔を貫く。
歪んでいても,少しも構わずに,僕を目に映して笑った。
「帰ろう? これから? ……無理よ。だって,私に未来なんてない。未来とは,過去の事なの。一生消えない過去が,未来を形作る。ハリー,私じゃもう,だめなのよ」
咄嗟に,言葉が出なかった。
そんなことないと言いたいのに,あまりにアリーの言葉が力強くて。
暗く灯る瞳が,彼女の人生の,悲惨で壮絶な様子をありありと示していて。
その一瞬が,彼女の決心を強固にした。
「ッアリーッ!!!!」