たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~

彼女へ馳せる想いーアリエル·アーシアーside

ーアリエル·アーシアsideー

ハリーが,私を呼ぶ声が聞こえた。

でも,私の魔法に間に合うはずもない。

その瞬間だけは,全てが異様にスローに見えた。

首から少し離した手のひらから,誰よりも早く誰よりも完璧な魔法を発現させる。

人より優れた魔法。

私を生かし続けた魔法。

だったら最期はやっぱり,魔法じゃなくちゃ。

ほんとはもう,ずっと前にいなくなっててもいいはずだった。

それこそ……エヴィーと逢うずっと前に。

私なんて,それでも足りないくらい。

だけど,それでも,それでも当たり前のような顔で生活し続けていたのは。

あなたに,もう一度逢いたかったからよ,ハリー。

本当に,あなたの方から来てくれるなんて本当は思っていなかったけど。

それでも期待した。

あなたが否定してくれること。

私の日々を受け止めてくれること。

あなたに,あの夜の話をすること。

全部,叶ってしまった。

これ以上ない形で,全て,叶った。

エヴィーには許さなかったくせに,私は自分で自分の最期を決めた。
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