たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~
音の回数から見て,2人以上は確実。
昼間にお客さんがやって来るのは,エヴィーを弟子にしてからは2回目の事。
エヴィーが家にいる以上,複数だと厄介だ。
出来るだけ,ギリギリの距離まで纏めて引き寄せなければいけない。
1人でもすれ違えば,その人は確実にエヴィーのもとを目指す。
エヴィーは余程魔法で対抗できる実力があるけれど,実戦出来る様な人でなしに育ててもいなければ,普通の女の子に魔法以外の実力なんてものもないだろう。
(エヴィーを襲わせたくない。それに,刺客の存在も,それを返り討ちにしていることも,知られてはいけない)
だから引き寄せて,尚且つ家からはなれた場所で一網打尽にする必要があるのだ。
ただの可能性と事実だったエヴィーの刺客との関係は,私の中で,いつしか切ない小さな恐怖となっていた。
(禁止区域に尋ねてくるお客さん,なんて。人懐っこいエヴィーの事だもの,会いたいと言い出してもおかしくない)
私は小さくため息をついて数分後,一人で家を出た。
「エヴィー。出掛けてる30分位の間,誰が来ても相手しちゃ駄目よ。見目のいい女の子を狙う輩は多いの。相手がしゃべる前に魔法で拘束しなさい」
「うん,分かってるよ。大丈夫!」