たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~
「一応形だけの卒業を迎える頃だったかしら。彼に,呼び出されたの」
「それって,もしかして……」
「どうだろう。多分,プロポーズするつもりだったんだと思う。そういう伝統があって,周りも色めき立っていたから」
(すごく,どきどきした。期待だってあって,その時に初めて,自分の気持ちを認めたの。だけど)
「私,いかなかったわ。ううん,どうしても,行けなかったの」
まるであの時に戻ったかのように,切ない気持ちが胸に広がる。
そうして,私はその日を境にこの森に住み始めることになった。
彼は数年経っても,過激なほど,ずっと怒ったままで。
「恨んでいるの,私のこと。だからもう,2度と逢えないの」
そう。
恨んでる。
それこそ……
何度自分の派遣した手下が殺されても,なお。
私を殺したくて,仕方がないほどに。
狂おしいほど,恨んでいる。