たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~
「そんな顔しないで,エヴィー。だからね,つまり。大事なのは,伝えられることは伝えといた方がいいってことよ」
「……うん。恥ずかしいけど,そうしようと思ってるの。背中押してくれてありがとう」
ーでも……エルさんの好きだったひとは,エルさんを恨んだりなんてしてないと思うな。またいつか,逢えるといいね。
エルさんは逢いたいんでしょう?
そんな,見え見えの副音声。
年下に見透かされて,恥ずかしいことこの上無い。
(全く。残酷なくらい優しいんだから)
どんな環境で育てば,あるいはどんな風に生まれればこんな完璧な子が出来上がるんだろう。
人間も,人の優しさも。
魔法では作れない。
(私だって。信じたかった。だから,信じられなかった。刺客の送り主なんて……調べなければよかったわ)
心からそう思う。
愛に至っては……
この世のどこにも存在などしない。
育ち始めた恋を目の前に,私はひっそりと口を閉じた。
(それとも。あなたなら見つけられるのかしら? エヴィー)
エヴィーとエヴィーに選ばれた人なら,唯一可能なような気がした。