たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~



「さあさエヴァ様,帰りますよ」

「最近はお帰りがやけに遅いと使用人達も心配しておりますゆえ」

「お父上もですぞ。今日もこんな大雨で,門限も過ぎました。あまり我らに冷や汗かかせなさいますな」

「もう,皆して心配症なんだから」



くすくすと中心で笑うエヴィーは,周りの反応にも慣れた様子。

濡れる心配もなくなり,帰ろうとゆっくり歩き出すエヴィーのフードが,はらりと落ちる。



(そう言えば)



エヴィーはそろそろ暑いと私に口を出しながら,毎日かかさずあの外套を身に付けて来ていた。

黒と白のデザインは,可愛らしく目を引くもので。

直ぐ引っ掻けるくせに,必ずいつも肌身離さず側に置いる。

その白の部分の生地は,遠目に見ても。

彼らの装束と同じものに見えた。



(てっきりどこかの貴族のお嬢様だと思っていたのに)



予想外もいいところ。



(エヴィーは教会と何らかの関係がある)



私の敵とも言える組織の,お宝(おひめさま)なのかもしれない。

雨足は,彼らの足音と反比例するように強くなり。

私のフードをぐっしょりと湿らせた。
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